@phdthesis{oai:uec.repo.nii.ac.jp:00000941, author = {後藤, 忠広 and Gotoh, Tadahiro}, month = {2016-09-15}, note = {2013, 全地球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System; GNSS)の信号を仲介とした時刻比較は,国際原子時(International Atomic Time; TAI)決定のための方式の一つである.本研究では,高精度な時刻比較に対応したソフトウェア無線技術によるGPS 受信機の開発を行った.TAI は,世界各国の標準機関(National Metrology Institute; NMI)が保持する原子時計の歩度を元に決められる.このため,NMI ではGNSS や商用通信衛星などを使用して互いの原子時計間の時刻差を計測している.GNSS 時刻比較では,搬送波位相を観測量として使用することで,擬似距離のみを使用した場合と比べ二桁程度時刻比較精度を改善できる.また,GPS ではL1 帯とL2 帯の二周波を受信することで電離層の影響を相殺した時刻比較が行える.時刻比較を行うためには,GPS 受信機に原子時計から供給される10 MHz と1 PPS 信号を入力し,受信したGPS 信号を外部から入力された10 MHz と1 PPS に同期して記録する必要がある.しかし,通常の二周波観測が可能な測地用GPS 受信機には10 MHz や1 PPSの入力端子は無く時刻比較目的には使用できない.一部,時刻比較に対応した受信機も市販されているが,種類は限られており,価格も測地用に比べると高価である.TAI 高精度化のためには,多くのNMI が二周波受信機による観測を行うことが望ましいが,現状では高価な受信機を保持しているNMI は全体の半数程度である.一方,汎用のアナログ・デジタル変換器(Analog-to-Digital Converter; ADC)はサンプリングクロックの切替えに対応した機種が多く,外部基準信号に同期してサンプリングを行えるため,これらADC に原子時計からの信号を供給しGNSS 信号を記録すれば,高価な市販受信機を使用せずとも高精度な時刻比較が行える.近年では,専用のADC と論理回路により構築されていたデジタル信号処理を,汎用のADC とパソコン上のソフトウェアで行うソフトウェア無線(Software-Defined Radio; SDR)技術の研究が進んでおり,GNSS の信号処理をパソコン上で行うソフトウェアGNSS 受信機の開発も数多く行われている.デジタル信号処理部をソフトウァで実装することで,アルゴリズムの実装やデバッグが論理回路に比べて簡単に行える.装置専用のシミュレーターがなくても,アルゴリズム単体から装置全体にわたる評価まで容易に行えるなど利点が多い.GPS 衛星が送信する測位信号は,複数の衛星が同一の搬送波に異なる擬似雑音(Pseudo Random Noise; PRN)符号を拡散した符号多重化方式が採用されている.これまではコード周期が短い民生用信号は搬送波周波数が1.5 GHz 帯のL1 にしか送信されておらず,1.2 GHz 帯のL2 では暗号化された軍用コードのみ送信されていた.軍用コードの復調をソフトウェア上で実装することは難しく,二周波観測が可能なソフトウェア受信機は極めて稀であった.しかし,2005 年以降に打ち上げられた衛星ではL2 にも民生用信号が送信されていることから,ソフトウェア受信機でも容易に二周波観測が可能となった.本論文では、高精度な時刻比較用受信機を安価に構築するため,外部同期可能な汎用ADCとパソコン上のソフトウェア相関器による二周波時刻比較用ソフトウェアGPS 受信機を開発し,その性能を評価した結果についてまとめる.デジタル信号処理をパソコン上のソフトウェアで行う場合,ハードウェアで実装した場合と比べどうしても処理速度が劣る.本研究では,ゲーム用に開発された画像処理ボード(Graphics Processing Unit; GPU)を使用することで,ハードウェアと同等の処理速度をソフトウェア相関器で実現した.FPGA などによる論理回路では,シフトレジスターと加算器の組み合わせで時間領域の相関器を容易に構築できるが,GPU のような並列計算機では積和演算は最適化が難しい.そこで,周波数領域の相関アルゴリズムを採用することで並列計算機での最適化を行った.通常は周波数領域に変換する際,大量のサンプリングデータに対してFFT を行う必要から時間領域の方が有利であることが多いが,FFT のアルゴリズムは並列計算機に最適化されており,GPUでは周波数領域で行った方が高速に処理できる.開発したソフトウェア受信機を使用して,共通アンテナ,共通基準信号による市販GNSS受信機との比較と,遠隔地におかれた原子時計間の時刻比較実験を行った.市販GNSS 受信機との比較では,擬似距離は低仰角におけるC/N0 が悪い状態を含めても5 ns 以内で一致しており,ヒストグラムからも白色雑音で分布していることが確認できた.一方,搬送波位相にはRFフロントエンドで周波数変換に使用した発振器の温度特性とみられる変動成分が検出された.今後,周波数変換用発振器の温度特性を調査するとともに,装置の恒温化などの対策が必要である.原子時計間の比較では,水素メーザーを使用した時刻比較精度の評価と,衛星双方向時刻比較方式との同時観測による時刻比較結果の正しさを評価した.比較精度の評価では,短期は水素メーザーの比較が可能な10-13 台の結果を得た.しかし,現状ではL2 民生用信号を送信する衛星が時間帯によっては減少してしまうため,このような時間帯では時刻飛びが生じ長期安定度が劣化した.そのため,平均化時間に対して理想的な1/τの改善は得られていないが,今後L2 民生用信号に対応した衛星が増加することで,1 日平均で10-15 台に達すると考えられる.衛星双方向方式との比較では標準偏差で2 ns 以内の一致度を得たが,やはり衛星数が減少する時間帯では時刻飛びの影響が見られた.一方,時刻飛びがない区間では1 ns 以内の一致度と,これまで行われた既存実験と同等の精度が得られており,正しい時刻比較が行えていることを確認した.ここ数年,欧州や中国では独自GNSS の運用が開始されようとしているほか,日本やインドでは地域的な測位衛星を打ち上げるなど,マルチGNSS の時代が到来したと言われている.また,新しい衛星ではより高精度な測位信号の送信も始まっている.ソフトウェア受信機ではこれら新しい信号に柔軟に対応可能であることから,今後はマルチGNSS に対応した受信機の改良を図り,より高精度な時刻比較が行えるよう引き続き開発を進めていきたい.}, school = {電気通信大学}, title = {GPUを用いた時刻比較用ソフトウェアGPS受信機の開発に関する研究}, year = {}, yomi = {ゴトウ, タダヒロ} }