@phdthesis{oai:uec.repo.nii.ac.jp:00006785, author = {岡崎, 龍太 and Okazaki, Ryuta}, month = {2016-10-17}, note = {2016, コンサートを鑑賞する,花火大会を楽しむといった日常の体験には,楽器の振動や花火の爆発という単一の物理現象によって触覚と聴覚を生じるという共通点が存在する.聴覚のみで知覚される場合に比して,触覚によっても知覚されることは,人と対象物が接している,あるいは近い距離に位置することを伝える大きな手がかりとなり,臨場感や没入感の向上に寄与していると考えられる.こうした利点から,映画,ゲームといったデジタルコンテンツにおいても,音と振動を組み合わせて提示する試みが数多く行われており,これらのデジタルコンテンツにおける触覚は視覚,聴覚に続いて重要な感覚提示チャネルとして注目されている.しかしながら近年急速に普及が進んでいるモバイル環境におけるデジタルコンテンツ体験では,ハイレゾリューションオーディオ技術やヘッドホンなどを用いて環境設置型デバイスと同様の高品位な聴覚提示が可能な一方で,モバイルデバイスの重量やサイズ,ユーザの動きを妨げない非拘束性といった制約上,触覚刺激の提示方法,範囲,強度に制約があり,従来の環境設置型と同様な触覚提示を行うことが困難であった.そこで本研究はこれらの制約を持つモバイル環境において,聴覚刺激を伴うコンテンツ体験(以下本論文では聴覚体験と定義)を触覚刺激によって拡張することを目的とする.なおモバイル環境とは狭義には手で持ち運べる環境を意味するが,本論文においては,mobile[可動性の]という言葉が示すように,ユーザの動きを妨げない非拘束性のある環境全体をモバイル環境と呼ぶ.またここで言う聴覚体験の拡張とは,本来触覚と聴覚が同時に発生するという状況を再現することにとどまらず,聴覚体験全体の主観的価値を高めることを指す.前述のとおり,ここで扱う触覚刺激と聴覚刺激は本来同一の物理現象に端を発するものであるが,本論文では伝搬の形態によって以下の二つの状況に分類した.ⅰ.振動源から空気伝搬された振動が聴覚刺激を生じ,それに伴った触覚刺激を生じる状況ⅱ.振動源から振動が直接身体に伝わり,それに伴った聴覚刺激を生じる状況ⅰの状況に対する先行研究では,例えば体感音響装置を用いて音楽を聴覚刺激としてだけでなく振動刺激としても提示し,複数感覚への提示によって音楽への没入感を向上させている.これはすなわち聴覚体験を触覚提示によって加算的に向上させることになる.対してⅱの状況は,例えば野球やテニスにおける打撃時の衝突感などをさす.衝突感は強い触覚刺激を伴うが,コンピュータゲームなどのデジタルコンテンツにおいては多くの場合音のみで提示されていた.これに触覚提示を加えることで,打撃の強度,対象物の材質感,位置,距離など聴覚刺激のみでは提示困難な情報を提示可能になると考えられる.各状況に応じた触覚提示を行うにあたり,本論文では触覚の持つ二つの側面に着目した.一つ目は触覚が時間的に変化する信号であるという側面である.聴覚と同じく,ヒトは触覚においても刺激を時間変化する信号として知覚している.このことから,触覚提示において「どのような波形を提示すればよいか」という検討が必要になる.二つ目は触覚が空間的に分布する信号であるという側面である.聴覚知覚がヒトの両耳のみで行われるのに対して,触覚の知覚は約1.6-1.8m2 の面積をもつ皮膚で行われている.それ故,触覚提示においては「どの部位に刺激を提示すれば良いか」という検討も行う必要が生じる.これらのことから,本論文では先に挙げた二つの状況における触覚提示による聴覚体験の向上を合わせて聴覚体験の拡張と定義し,状況ごとに触覚の二つの側面に対応した触覚提示を行うことで,触覚提示手法等が制限されるモバイル環境における聴覚体験の拡張を目指す.本論文は以下の7 章より構成される.第1 章では,我々が日常生活において常に知覚,利用している聴覚と触覚の関わりを基に,単一の物理現象から聴覚と触覚が同時知覚される状況を分類,モバイル環境における聴覚体験拡張の課題を見出し,本論文の目的について述べる.第2 章では,本論文で扱う触聴覚クロスモーダル現象の理解に必要となる触覚及び聴覚に関する知見をまとめる.触覚・聴覚に関する生理学的な知見に関して述べ,次章以降で扱う触聴覚クロスモーダル現象に関して必要な知識を共有する.第3 章では,モバイル環境下で触覚刺激によって聴覚体験を向上させるという目的に対して,触覚刺激の波形の寄与に関する基礎的検討を2つの観点から行う.第一の観点は,触覚の提示によって聴覚を「強く」感じることが出来るか,というものであり,第二の観点は,触覚の提示と聴覚が「あって」感じる事ができるか,というものである.この結果として,幅広い周波数帯域を持つ刺激であっても触覚は聴覚を強めること,また聴覚刺激と触覚刺激の周波数がオクターブ違いの関係にある時に,聴覚で知られる協和度が知覚可能であることを示す.第4 章では前章までの知見を元に,「振動源から空気伝搬された振動が聴覚刺激を生じ,それに伴った触覚刺激を生じる状況」の代表として,モバイル環境下における音楽の聴取に着目する.触覚と聴覚の知覚可能周波数範囲の隔たりに対処するため,聴覚刺激の周波数の2 の階乗分の1 の周波数となるよう分周して触覚刺激として手掌部より提示する手法を提案,検証する.第5 章では,モバイル環境下で触覚刺激によって聴覚体験を向上させるという目的に対して,触覚刺激の部位の寄与に関する検討を行う.手掌部への触覚提示では困難な,身体広範囲へ触覚提示可能かつ小型軽量でユーザの非拘束性を損なわない触覚提示装置の開発について述べる.提案手法としてユーザの鎖骨に振動を提示し,骨格を介して振動を上半身に伝搬させる手法の提案と,心理物理実験による主観的な聴覚体験への影響の検証を行う.第6 章では二つ目の分類に当たる「振動源から振動が直接身体に伝わり,それに伴った聴覚刺激を生じる状況」の代表として,打撃時の衝突感を触覚で提示することを試みる.触覚によって知覚可能な打撃の強度,対象物の材質感,位置,距離のうち,特に聴覚で提示が困難とされる対象物の前後方向の距離定位に対して触覚提示によって操作することを試みる.最後に第7 章では第3 章から第6 章で述べた研究を総括する.各研究を通じて得られた知見を元に,モバイル環境下における聴覚体験拡張手法とその限界,今後の展望についてまとめる.}, school = {電気通信大学}, title = {モバイル環境における触覚を用いた聴覚の拡張}, year = {}, yomi = {オカザキ, リュウタ} }