WEKO3
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紙と電子メディアの利用が読みに与える影響に関する定量的比較研究
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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9000000733.pdf (9.9 MB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2014-03-24 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | ja | |||||
タイトル | 紙と電子メディアの利用が読みに与える影響に関する定量的比較研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
高野, 健太郎
× 高野, 健太郎 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 紙は少なくとも1000 年以上,情報を表示するための主たるメディアとして利用されてきたが,近年では状況が変わりつつある.文書を読む活動の多くを占める,娯楽や業務を目的とした読みでは,電子メディアを利用する機会が多くなっていることが指摘されている. 一方,こうした電子メディアの利用が進んでいる読みにおいても,読むためのメディアとしては依然,紙が好まれている.このことは,娯楽や業務を目的とした読みに関して,現状の電子メディアが紙に及ばない点があることを示唆している.実際,読みのプロセスの観察に基づき,電子メディアにはない紙の利点が読みを効果的に支援していることが指摘されている. しかし,娯楽や業務を目的とした読みにおけるメディアの読みやすさの違いや,読みを支援する紙の利点は,アンケートや観察に基づき定性的に議論されることが多かった.言い換えれば,紙を好む読み手の心理や観察者が見出した紙の利点は,先入観や思い込みに過ぎない可能性がある.メディアの効果の違いを実際に確認することは,紙と電子メディアを効果的に使い分けるための示唆を提供し得る.また,これらの読みでの紙の利用が効果的であるとして,その決定要因となる紙の利点が明らかになれば,読みを支援する電子的システムの改善の示唆とすることができる. そこで,本研究では娯楽や業務を目的とした読みを対象に,紙と電子メディアの違いが読みに与える影響を定量的に検証し,その影響要因についても数量的なデータに基づき明らかにすることを狙いとして,一連の評価実験を行った.なお,業務では会議や打ち合わせで資料を読むことも頻繁になされるため,文書を1 人で読む場合だけでなく,複数人で読む場合も研究対象とした.すなわち,娯楽を目的として文書を読む場合,業務の中で文書を1 人で読む場合,業務の中で文書を複数人で読む場合の3 種類の読みを対象に,以下の実験を実施した. 実験1.娯楽を目的とした読み 本実験では,娯楽を目的とした読みを対象に,紙の書籍,iPad やKindle といった電子書籍端末,PC の利用が読みに与える影響を分析した.従来研究では検討されていなかった,娯楽を目的とした読みでの,読みの効率における紙の優位性の決定要因を定量的な検証により明らかにすることを目的とした. まず,娯楽を目的とした読みにおける紙の書籍の優位性が,娯楽を目的とした読みでの文書操作の大半を占めるページめくりの操作性に起因していると考え,これを検証することを試みた.具体的には,ページめくりの前後の読みとそれ以外のページめくりを含まない読みとを分離し,紙と電子メディアでの読みのスピードを比較した.ページめくり前後の読みでのメディア間での読みのスピードの違いが,ページめくりの操作性のメディア間での違いが読みに与える影響を反映していると言える.次に,実験で示されたページめくりの操作性における紙の優位性の理由を探るため,操作に必要な認知負荷のメディア間での違いを二重課題法により検証した.具体的には,読みの最中に,ブザー音に反応して,できるだけ速くフットペダルを踏むことを二次課題として課した.二次課題への反応時間が長いほど,ページめくりの操作に要する認知負荷が高いと言える.実験参加者は24 名である. 結果として,ページめくりを含まない限りにおいてメディア間での読みのスピードに違いは無く,ページめくり前後の読みは電子メディアに比べて紙が有意に速かった.このことから,電子メディアに比べて紙での読みが速く,その理由がページめくりの操作性の違いにあることが明らかとなった.次に,ページめくり前後の読みでの,二次課題への反応時間は電子メディアに比べて紙が有意に短かった.紙でのめくりが優れている理由が,ページめくりに必要な認知負荷が低いためであることが示された.最後に,読みのプロセスの観察から,紙の書籍でのめくりの認知負荷が低い理由は操作を視覚のみに依存していないためであることが示唆された.以上の結果より,娯楽を目的とした読みにおける紙の書籍の優位性は,ページめくりの操作性が一因であることを実証した. 実験2.業務の中で文書を1 人で読む活動 (複数の文書を相互に参照する読み)本実験では,業務の中で文書を1 人で読む場面で頻繁に生じる複数の文書を相互に参照する読みを対象に,紙とPC の利用が読みに与える影響を分析した.従来研究では,こうした読みを紙の操作性が効果的に支援することが指摘されているが,その効果が定量的に示されることはなかった.そこで,紙とPC の違いが読みのパフォーマンスに与える影響を定量的に検証すること,さらに影響が存在する場合には,その影響要因を明らかにすることを目的とした. 実験参加者24 名に,複数の文書を相互に参照しながら文章の誤りを見つける (校正)課題を紙とPC で行ってもらい,読みのパフォーマンスとして作業のスピードと正確性を比較した.次に,読みのパフォーマンスの比較で明らかになった紙の優位性の理由を探るため,読みのプロセスについて分析した.実験参加者16 名に紙とPC で複数の文書を相互に参照する校正読みを行ってもらい,読みの最中になされる行為と,参加者からの言語報告をもとに行為の意図を収集した.こうして得られたデータをもとに,読んでいる最中に文書になされる操作行為を類型化し,紙で読んだ場合とPC で読んだ場合とで,どのような行為がどの程度行われるのかを分析した.さらに,読みのプロセス分析で示唆されたメディア間での文書の配置効率の違いの検証と,その影響要因についても追求を行った.具体的には,実験参加者24 名に指定した配置に文書を並べる課題を行ってもらった. 結果として,まず,PC に比べて紙での読みは有意に速く,読みの正確性も有意に高いことを確認した.次に,読みのプロセスの分析から,文書間での注意の行き来をしやすくしたり,読み飛ばしや読んでいる箇所を見失うことを防止するポインティングをPC に比べて紙が有意に促進することがわかった.また,PC よりも紙は読みの最中に文書の移動に費やされる時間が有意に短く,文書配置の変更により読みが阻害されないことがわかった.最後に,文書配置課題の結果から,PC に比べて紙での配置効率が有意に高いことが明らかになった.そして,紙では文書を操作する手を片手に制限したり,文書の接触領域を制限することで,文書の配置効率が有意に低くなった.このことから,両手を使って複数の文書を同時に移動できること,文書の接触位置の自由度が高いことが紙文書の配置効率に寄与していることがわかった.さらに,操作可能な手を片手に制限し,文書の接触領域を制限したとしても,PC に比べて紙での文書配置効率が有意に高かった.このことから,マウスを介した間接的な文書移動よりも,手で直接文書を移動する方が速いことがわかった.以上の結果より,複数の文書を相互に参照する読みにおいて,PC に比べて紙での読みのパフォーマンスが高いことを実証した.さらに,紙の優位性が文書をポインティングしたり,文書を移動するといった行為のしやすさに起因していることが明らかになった. 実験3.業務の中で文書を複数人で読む活動 (文書を参照しながら議論する) 本実験では,業務の中で文書を複数人で読む活動として,業務の中で頻繁に生じる議論のための読みを分析対象とした.従来研究では,紙の優れた操作性が議論を効果的に支援することが指摘されているが,その効果が定量的に示されることはなかった.また,そこでの分析対象のメディアは紙とPC であり,タブレット端末の利用が議論に与える影響は未検討のままであった.そこで,文書を参照しながら議論をする場面を対象に,文書をタブレット端末やPC で表示した場合と,紙文書を利用する場合とで,議論のしやすさを定量的に比較した.これらのメディアの違いが議論のプロセスに与える影響の定量的な検証と,影響が存在する場合には,その影響要因を明らかにすることを目的とした. 実験参加者24 名 (2 名1 組の12 組) に文書を参照しながら議論する課題を,紙,iPad,ノートPC の3 種類の表示メディアを用いて行ってもらい,議論に要した時間やプロセスを分析した.議論のプロセスを調べる指標として,議論の最中になされる,課題達成のために必要不可欠な意見のやりとりの発生頻度,指示代名詞の使用頻度,相手の顔を見る頻度に着目した.さらに,メディア間での議論のプロセスに違いが生じた理由を探るため,議論の最中に文書になされる操作についても分析した. 結果として,まず,統計的に有意な違いが得られているわけではないが,議論に要する時間は電子メディアに比べて紙が短いことが示唆された.次に,課題達成のために必要不可欠な意見のやりとりの発生頻度,指示代名詞の使用頻度,相手の顔を見る頻度は電子メディアに比べて紙が有意に高かった.すなわち,活発な意見交換や,相手に配慮しながら議論することが求められる場面では,電子メディアより紙を使う方が望ましいことがわかった.最後に,議論中の文書操作の観察から,電子メディアではページ間の行き来の操作に手間取っており,このことが意見交換に集中することを阻害し,相手の顔を見ながら話す余裕を失わせたことが示唆された.また,議論中に相手に自分の文書を見せる頻度は電子メディアに比べて紙は有意に高かった.相手に自分の文書を見せやすいことが,相手と同じものを見る機会を増やし,指示代名詞の利用を促進したことがわかった. 以上のように,娯楽を目的として文書を読む場合,業務の中で文書を1 人で読む場合,業務の中で文書を複数人で読む場合での代表的な3 つの読みを,紙と電子メディアで行い,その効果の違いを検証した.また,読みやすさに影響を与える具体的な因子をあげ,その効果を定量的データに基づき分析した.結果として,いずれの読みにおいても紙の優位性が確認され,メディアの操作性の違いがその影響要因であることが示された. | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 12612 | |||||
学位授与機関名 | 電気通信大学 | |||||
学位授与年度 | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 2013 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2014-03-24 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第754号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |